過労死判決

 従業員の過重労働に対し、京都地方裁判所が損害賠償を認めた。


毎日新聞より引用)

 全国チェーンの飲食店「日本海庄や」に勤務していた吹上元康さん=当時(24)=が過労で死亡したのは、過重な労働を強いた企業の安全配慮義務違反として、両親が同店を経営する「大庄」(東京)と同社の社長らに慰謝料など約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、京都地裁であった。大島眞一裁判長は「労働時間について配慮していたものとは全く認められない」として原告側の主張を認め、同社などに約7800万円の支払いを命じた。

 判決理由で、大島裁判長は元康さんの勤務先が1カ月300時間を超える長時間労働が常態化されていたことをあげ「企業は元康さんの生命や健康に配慮すべき義務を負っていたにもかかわらず、休憩や休日を取らせておらず何ら対策を取っていなかった」と指摘。「月80時間」の時間外労働をしなければ給与が差し引かれる当時の同社の給与体系についても「労働時間が長くならないように適切な措置を取る体制をとっていたといえない」と述べた。

 判決などによると、元康さんは平成19年4月に入社。「日本海庄や石山駅店(大津市)に配属されたが、同年8月11日未明、自宅で就寝中に急性心不全で死亡した。死亡までの約4カ月間の時間外労働は、月約100時間前後と過労死の認定基準(月80時間超)を上回っており、大津労働基準監督署に労災認定された。

 判決後の会見で、元康さんの父、了(さとる)さん(61)は「判決には満足しているが、子供を返してほしいというのが本音。判決は、過労死に苦しむ他の方々の励みになる」と話した。判決を受けて、同社広報室は「判決文を見た上で、十分に検討したい」としている。


 新聞記事によると、月の労働時間が300時間を超え、時間外労働が80時間に満たないと給与が差し引かれる仕組みになっているという。月の労働時間が300時間だとすると、31日ある月だと法定労働時間は約177時間。時間外労働が123時間あることになる。大まかな計算になるが、週1日休みが取れたとしても1日の実労働時間は10時間強になる。過労死の認定基準以上の労働であり、過去にも会社側の責任(安全配慮義務)を認めた判決もあった。今回の判決で注目するところは、役員に対しても違法性を認めたところである。月80時間以上働かなければ、定められた給与を受け取ることができない給与体系であれば労働時間に対する配慮が欠けていると指摘されても仕方ないだろう。

 社会保険労務士として会社側の時間外手当を削減したいという相談は多い。変形労働時間制やみなし労働制など法律で認められているものを駆使して賃金規定を提案する。それでも、労働時間が長くなりやすい業種や業務はある。賃金の支払い方法だけみると、80時間超過分もきちんと支払われ、36協定の協定範囲内であれば労働基準法の違反は無い。しかし、いくら規則を完璧にしても違法なことはある。就業規則の作成を行う際に、技に走っしまうことはないわけではない。社労士として教訓にしなければならない事件であると思う。